よく質問のある内容なのですが、早めに矯正治療をした方が良いでしょうか?様子を見た方が良いでしょうか?と聞かれます。お子様のお口は仕上げ磨きなどで親御さんは確認するタイミングがあるので心配される気持ちはすごくわかります。
遺伝的な影響、習癖による影響など様々な要因があるのでそれぞれ見ていきましょう。
早めの介入は可能か?
実際僕の息子も3歳で乳歯列が完成したときに反対咬合(下顎の歯が前に出る噛み合わせ)だったのでムーシールドと呼ばれるマウスピースを使ったMFT(筋機能療法)で改善しました。その後6歳児で生え変わりの時にまたもや反対になりかけたので再び使用を開始して改善したことがあります。
歯並びは遺伝的な要素と機能的な要素で大体決まるので歯の並ぶスペースが足りない場合や親御さんの歯並びがそれほど悪くないのに歯並びが悪い場合などは介入すると改善されるケースが多いです。
ムーシールドの他にもパナシールド、マイオブレイス、プレオルソなども筋機能療法の一つです。原理としては舌の位置の修正、口呼吸から鼻呼吸へ、適正な口唇圧、舌癖や開口などの習癖の除去がメインとなります。適切なポジションで継続して使用する事が出来れば意外とこの装置だけで改善する事が多いです。
MFTとは?
MFTとはoral myofunctional therapy と呼ばれる口腔筋機能療法と呼ばれ上記のような補正をするトレーニングの総称です。歯並びや噛み合わせの形成は遺伝だけでなく幼少期の生活習慣や癖なども影響を及ぼしており、マウスピースを使った方法や舌トレーニング、鼻呼吸トレーニングなどがあります。
下の画像はマイオブレイスのソフトタイプになります、このマウスピースをつけることで舌の位置を矯正し、歯列を整えるよう誘導、口呼吸から鼻呼吸へと促します。
拡大床と呼ばれるマウスピースを使った治療
6歳くらいになると前歯が生え変わるタイミングがおとずれます。
このタイミングで行える治療が拡大床を使った歯列弓を拡大する装置を使った治療です。
真ん中もしくは力をかけたい方向へネジを回して力をかける事によりスペースを作り、歯を並べていきます。
ただ永久歯が生え始めて前歯が少しガタガタで乳歯でスペースが足りなさそうな場合では、10歳頃に生えかわる乳臼歯と呼ばれる歯は後継で生えてくる小臼歯の方が幅が狭いことと顎の成長によりキレイに並ぶ可能性もあるので経過を観るというのも別に悪いわけではありません。結構親御さんを不安にさせて治療に誘導する歯科もありますが、永久歯が生え揃った段階できちんと診断して治すのも全然ありです。
実際に低学年で歯並びが悪くでも自然に治っているケースも多々経験しています。
開咬(前歯が噛み合わない)や反対咬合(下顎の歯が前に出ている)に関しては個人的には早期に介入した方が良いと思います、骨格的な要素が強い場合は成長した後に顎を切って治す治療が必要になります。この場合は顎変形症の病名が認められれば保険治療の範囲で行うことも可能となります。
早期に介入しない場合
上記のように早期に介入した場合でも顎の成長とともに歯並びは完成していくので成長を待ってからしっかりと診断してから矯正治療に入るのも選択肢の一つとなります。
親御さん達は自分は歯で苦労したから子供には同じ思いをさせたくないという気持ちもわかるのですが、様子をみても良いケースは多々あります。
小児の時期は様子をみて成長してから矯正治療に入るタイミングとしてはいつになるのか、というと12歳臼歯と呼ばれる第2大臼歯が生えそろう中学生頃の時期から可能になります。もちろん成人してから、社会人になってからなどタイミングはいつでも良いです。
この時期に行う治療はⅡ期治療と呼ばれ、ワイヤーを使った本格矯正や最近では適応症例も広くなった透明なマウスピースを使ったマウスピース矯正を行います。
マウスピース矯正とは?
近年、大幅に適応症例を増やしてお手軽に始められて違和感や審美性に優れているため爆発的に拡大している矯正治療がマウスピース矯正です。
従来までのワイヤーを使った矯正治療は繊細なワイヤーにかける力の調整で歯を動かすため専門的な養成期間での訓練が必要でしたが、マウスピース矯正の場合は診断さえ出来れば後はコンピュータ上で歯を少しずつ動かしたマウスピースを作ることで歯を動かせるので一般の開業医でも手軽に導入が出来るので広がりをみせています。
ただ注意しなければならない点がありますので説明をします。
・マウスピースをしっかりと装着しないと動かない
当然ですが、取り外しが出来る装置なので着けたり外したりは自由に出来ます。色々なメーカーがありますが推奨される時間、期間をしっかりと守って装着しないとシュミレーション通りに歯は動いてきません。
・症例が限られている
以前よりはだいぶ適応症例が拡大されていますが、ワイヤーに比べると力のかかり方が異なるため大幅な歯の移動には向いていません。骨格的な診断もしっかり受けた上で対応してもらうと良いでしょう。
・歯列が拡大する
殆どの場合は非抜歯で歯列と呼ばれる歯の並びを拡大することでスペースを作り並べていくため、全体的に歯並びが前に出ます。症例によってはしっかり抜歯して矯正した方が綺麗に仕上がります。
どんな治療法にもメリットデメリットはあるので、よく検討をするのが良いでしょう。
歯並びが悪いデメリット
・歯ブラシが届きずらく不衛生になりやすい(虫歯や歯周病のリスクが高まります)
・噛み合わせが悪いと上手に噛めない(開咬だと麺類が噛み切りずらくなります)
・滑舌が悪くなる
・お口が閉じづらいと口呼吸になりやすい
などのデメリットがあります、そのあたりも考慮してどの時期に介入するのが良いか判断するのが良いです。
最近では情報が溢れて何が良いかもわかりませんが、歯科医の考え方や患者さんの状態によっても対応が異なりますのでまずは色々な歯科に相談してみるのも良いと思います。
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