認知症と言っても人それぞれ脳の障害部位によって様々な行動の変化、症状があります。
食べ物を認知する先行期において認知症や失認、失行といった高次脳機能障害によって問題が起こってくるケースが多くなってきます。
短期記憶の障害によって少し前の食事をとった出来事を忘れてしまうことがあったり、箸を何に使うものかの判断がつかなくなってしまうことがあります。
また食べ物とそうでないものの区別がつかなくなり、食べ物以外のものを何でも口に入れてしまうことも起きます。
順序立てて物事を進める実行機能の障害で早食いや詰め込みが起こり本人の嚥下機能や咀嚼機能を超えて誤嚥や窒息のリスクが高まることもあります。
まずは有名な3大認知症についてみていきましょう!
認知症の種類
①アルツハイマー型認知症
認知症の割合の中で最も多いのがアルツハイマー型認知症で、全体の約70%を占めます。脳の中の海馬と呼ばれる記憶を司る部分の脳の萎縮が特徴で、初めは物忘れの症状が出ます。女性に多く徐々に進行して症状が拡大していきます。
②脳血管型認知症
いわゆる脳梗塞、脳出血などが原因で脳の血液の循環が悪くなることにより起こる認知症です。まだら認知症と呼ばれ感情のコントロールが困難になることも特徴で、原因となる疾患によっても異なりますが段階的に進行していきます。
③レビー小体型認知症
レビー小体と呼ばれる特殊なものができることで、脳の神経細胞が死滅してしまうことで起こる認知症です。特徴としてはパーキンソン症状が良くみられ幻視、妄想、うつ状態など1日でも症状が安定しないのが特徴です。急速に進行することもあります。
長谷川式認知症スケール
長谷川先生が開発した簡便に出来る認知症評価の検査です。
あくまでスクリーニング検査なので点数による重症度判定はなく参考値となります。
①年齢はいくつですか? | 2歳の誤差まで1点 |
②今日は何年何月何日何曜日 | 各1点 計4点 |
③今いる所はどこですか?5秒後にヒント | 正解2点 ヒントあり1点 |
④これから言う3つの言葉を言って下さい「桜・猫・電車」 | 各1点 計3点 |
⑤100から7を順番に引いて下さい | 1回1点 2回2点 |
⑥これから言う数字を逆から言って下さい | 各1点 計2点 |
⑦先ほど覚えて貰った言葉をもう一度言って下さい | 正解2点 ヒントあり1点 |
⑧これから5つの品物をみせます、それを隠しますので何があったか言って下さい。*相互に関係のないもの | 各1点 計5点 |
⑨知っている野菜の名前を出来るだけ多く言って下さい | 0~5個0点 6個1点 7個2点 8個3点 9個4点 10個5点 |
30点満点中20点以下で認知症の疑いがあると判定されます。疑わしい場合は専門の医療機関を受診して診断・早期対応をした方が良いです。
失行・失認・失語とは?
失認とは見えているもの、聞こえているものが何なのか認識出来無い状態をいいいます。たとえば机にリンゴが置かれていたとして目でみえているがそれが食べるものであると認識できていない状態です、食物の認知が下がると溜め込みが起こりやすくなります。
失行とは運動機能が障害されているわけでは無いのに関わらず、やり慣れた動作が難しくなる状態を言います。例えばお箸の使い方が分からなくなったり、リンゴを口に入れても咀嚼しないなどの状態になります、これも溜め込みが起こりやすくなります。
失語とは言われていることが分からなくなったり、言葉が出てこなくなる状態で障害されている部位によって状態は異なります。
ブローカ中枢が障害される場合は言われていることはわかるが言葉が出てこなくなり、ウェルニッケ中枢が障害される場合は言葉が理解出来くなり、言葉は出ますが支離滅裂になってしまいます。他にも色々な状態の失語があるので一括りに失語と言っても色々な状態があります。
認知症に対する摂食嚥下の対応
まずはどの部分で問題が起きているのか良く観察をしましょう。空間認知の問題があれば左右差、奥行き、高さ、 食物認知の問題があれば食べ物と認識出来ている食材の置き方、嚥下までの反応の良い食材、咀嚼のスイッチの入る食材などを注意深くみてそれぞれの人に合った対応が必要になります。
認知症の患者さんは咽頭機能は維持されているケースが多く、自食が難しくなるケースやお口の中に溜め込んで飲み込まないといった問題に多く遭遇します。
30度頸部前屈位など重力を使って送り込みを補助したり、流れの良いジュレなどを使用するのも良いでしょう。非常に対応が難しいですが、諦めずによく観察をして色々試しましょう。
摂食嚥下の自発的な訓練は難しいため、周りの環境を整えるアプローチが必要になります。
認知症に関しては様々な書籍が出ていますが、一般の人でも分かりやすい漫画で描かれているこちらの本がおすすめです。
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