今でこそ口腔ケアの重要性は認知度が上がっていますが、以前は殆どの施設や病院でも手が回っておらず口腔内は悲惨な状態な事も多々ありました。口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防になるのはもちろん口腔ケアはただ単に口腔をきれいにするのが目的ではなく、生活やそのひとらしさをとりもどす為に全身的な状態の変化(体調、覚醒の状態、声、嚥下・・・)も把握して取り組む必要があります。
口腔ケアをやる前の準備
①姿勢の保持
口腔ケアをやる場合はベッド状で行う場合と車椅子やリクライニング位、椅子に座って食事をする場合など嚥下リハを行う時と同様に姿勢や頭の位置には気をつけましょう。
誤嚥防止と患者さんが出来るだけ疲れない姿勢を選びます。
②介助者の介助
姿勢が決まったら体幹を保持できるよう調整して介助者がいる場合は、頭部の固定、暴れたいり抵抗する場合も想定して介助をします。
③全身状態の観察
セッティングが終わったら患者さんの状態を確認しましょう、覚醒状態、体調、口腔内の状態を順番にお話しをしながら、もしくは良く観察して診ていきます。
口腔ケアのやり方
使う器材
・柔らかめの歯ブラシ ・歯間ブラシ(デンタルフロス) ・スポンジブラシ
・舌ブラシ ・義歯ブラシ ・口腔内ウェットティッシュ
・保湿ジェル ・歯磨き粉 ・口腔内を照らすライト
・デンタルミラー ・ガーグルベース ・洗口剤
①準備が出来たらまずは口腔内の状態を確認しましょう!
・前回見た時と変化が無いか
・虫歯の有無
・歯肉の腫れの有無(歯石の有無)
・口腔内の汚れている部分の確認(麻痺則に残りやすい)
・舌苔の有無
・口腔内の乾燥度
・口蓋や咽頭部に痂皮が付着していないか
②口腔内の清掃
舌苔や痂皮がある場合は先に保湿ジェルや重曹などで柔らかくしておきましょう。
あとは機械的清掃で口腔内の汚れを隅々まで落としていきます、舌側と歯間部が見落としがちなので必ずライトで確認をしましょう。
うがいが出来る方はうがいをしてもらいます、出来ない方はスポンジブラシもしくは口腔内ティッシュでよく拭き取ります。
次に柔らかくしておいた舌苔や痂皮の除去をします、舌ブラシや歯ブラシ、タフトブラシなどを駆使しながら除去します。ピンセットで無理に剥がすと粘膜が傷つくので気をつけます。
口腔ケアの目的
① 覚醒の向上 意識レベルの改善
・お口に刺激を入れる事により覚醒を向上
・声かけや指示を入れる事による意識レベルの改善
② 口腔内の環境の改善
・口腔疾患の予防(う蝕、歯周病)
・呼吸器への感染予防(誤嚥性肺炎・インフルエンザ)
③ 口腔機能の維持・回復
・口腔内の爽快感、口臭予防、口腔内感覚の改善に伴う食欲の増進
・歯科治療による咬合の再建
④ 摂食嚥下,構音に関連する筋肉の廃用、萎縮の改善予防
・食欲増進・食事時間の短縮
・むせの軽減・嚥下機能の改善
⑤ 脱水・低栄養の予防・咽頭乾燥予防
・口腔内の乾燥の予防
・唾液の分泌の促進
⑥ 全身の健康維持・回復及び社会参加
・食欲増進による栄養改善、体力の維持、回復
・体力の維持・回復に伴うADLの向上
・言語の明瞭化及び口臭の消失によるコミュニケーションの改善
今回は主に汚れを取り除く器質的口腔ケアの部分にフォーカスを当ててご紹介しました。機械的口腔ケアは嚥下リハビリの時にまた紹介します。
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