嚥下障害の症状は窒息や誤嚥などですが、咽頭機能、喉頭機能の障害が原因で起こるのでは無く、食べ物を認知してから捕食、咀嚼、食塊を形成して送り込んで飲み込む一連の流れのいずれかが障害を受けることで起こります。
今回は嚥下障害となる要因を分けてみていきたいと思います。
大きく分けて3つの障害があります。
①機能的障害
機能的障害とは感覚や動きの機能の低下により、嚥下反射の低下や舌の運動の低下、飲み込みに関する筋肉の力や動きが低下することを言います。
脳血管障害や認知症、神経筋進行性病変など多くの嚥下障害はこの要因の場合が多いです。
動きが悪いのか、感覚が悪いのか、力が弱いのかなど障害される部分によって症状は異なります。
それぞれの疾患の特徴をおさえた上でリハ計画や食形態を考えることが重要です。
・ADL機能の低下、咳反射、粘液輸送能の低下
・脳幹部梗塞 出血 両側基底核出血 両側仮性球麻痺
・脳血管障害による後遺症
・パーキンソン病 筋萎縮性側索硬化症 筋ジズトロフィー 重症筋無力症
・認知症 アルツハイマー 前頭側頭型 レビー小体 脳血管型
認知症に関してはこちら → 認知症患者の摂食嚥下障害の特徴
②器質的障害
器質的障害とは臓器そのものに異常があり障害が起こることで癌や炎症、入れ歯の不具合などがそれにあたります。入れ歯や歯がなければ固いものの咀嚼は難しいですし、舌癌などで広範囲で切除した場合も食塊の輸送や口蓋への圧迫がうまくいかず飲み込みが難しくなります。歯科治療やPAPなどを用いた対応が効果的です。
・歯の欠損・義歯不適合
・舌炎 歯周病 咽頭炎
・口腔・咽頭腫瘍 とその後遺症
・頸椎症 頸椎腫瘍
③医原性(介護原性)
医原性とは入院することによる衰えや薬の副作用、経管栄養による障害、など治療行為によって障害がもたらされるものです。当然お口から食べていない期間が長いと回復までも時間がかかります、嚥下評価を行ったのちにリスクの少ない食形態から摂食訓練をすると良いでしょう。
・経管栄養チューブによる圧迫
・気管内挿管の抜管後
・抑制による廃用性症候群
・食事の味や形態による食欲低下
・うつ・心身症による生活意欲の低下
・薬剤の副作用(抗精神薬 抗コリン薬による口腔乾燥 抗パーキンソン薬による口腔ジスキネジア)
まだまだ色々な要因が複雑に絡んで嚥下障害は起こります、ただ上記のような基本的な診療情報を把握した上で対応しなければなりません。簡単には改善はみられませんが要因をある程度把握して対応、介入することは必須となります。
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