小児の摂食嚥下機能発達には八つの段階があるかことが知られています(向井 2000)
母乳や哺乳瓶からのミルクの摂取から始まり、徐々に柔らかい食べ物へ移行し歯が生えてくると前歯による剪断や咀嚼運動と徐々に食べ方を獲得していきます。
摂食機能発達の段階
1 経口摂取準備期 哺乳反応、指しゃぶり、玩具なめ、舌突出など
2 嚥下機能獲得期 下唇の内転、食塊輸送、舌の前後運動
3 捕食機能獲得期 顎・口唇の随意的閉鎖、上唇での取り込み
4 押し潰し機能獲得期 口角の水平の動き(左右対称)
5 すり潰し機能獲得期 頬と口唇の協調、口角の引き 顎の偏移
6 自食準備期 歯がため遊び 手掴み遊び
7 手掴み食べ機能獲得期 頸部の回旋 手掌での押し込み 前歯咬断
8 食具食べ機能獲得期 頸部の回旋 食器の口角からの挿入 食器での押し込み
❶経口摂取準備期
この時期は哺乳反応や指しゃぶりで口腔内の感覚を学習する時期です
障害された場合は拒食、過敏、摂食拒否、誤嚥などがみられます。
❷嚥下機能獲得期
この時期は反射から嚥下機能にうつる時期で、下唇を上唇のなかに入れて嚥下する動きや舌の前後運動を獲得する時期です
障害された場合はむせ、逆嚥下、食塊形成不全、流涎などがみられます。
❸捕食機能獲得期
この時期は自発的に口唇をとじて食べ物を捕食する動きがはじまります
障害された場合は食べこぼしや過開口、舌突出、スプーン噛みなどがみられます。
❹押し潰し機能獲得期
口唇を閉鎖することで、舌が前後運動だけでなく上下運動出来るようになります。
食べ物を押しつぶす時に口角が左右対称に引かれます
障害された場合は丸呑み、舌突出、食塊形成不全などがみられます。
❺擦り潰し機能獲得期
舌で食べ物を押し潰せるようになると、今度は上下の顎ですり潰す動きが出来るようになります。押し潰し期とは違い口角が左右非対称に動きます
障害された場合は丸呑み、口唇閉鎖不全などがみられます。
❻自食準備期
今までの口だけの動きから、食べ物をみて手で運んで食べると言った全身との連動が始まる時期です
❼手掴み食べ機能獲得期
手指を使って食べ物を口に運ぶ機能の発達する時期で、体幹の安定や頭部の回旋から手指での押し込みまで自分で出来るようになる時期です
❽食具食べ機能獲得期
スプーン→フォーク→お箸 へと食べ物をお口まで運ぶ動作を獲得する時期で個人差があるが6歳くらいまでにお箸の使い方を習得します
それぞれ特徴的な動きがあり、障害されると拒食、むせや食べこぼし、丸のみ、食塊形成不全などがみられるようになります。
早期に介入した方が良いケースもありますが、全身的な成長と同様に個人差がありますのであまり神経質になるのも良くないです。
小児の摂食機能療法
①食環境指導
心理的配慮(雰囲気づくり) 声かけや食事をする雰囲気づrクリ
摂食姿勢、食具食器の選定
②食内容指導
食形態の選択、栄養指導、機能をみながらの食上げ
③機能訓練
間接訓練 脱感作、鼻呼吸、嚥下促進、筋訓練など
直接訓練 捕食、咀嚼、自食訓練など
バンゲード法
口唇閉鎖不全や口唇機能不全の場合に行う訓練で、優しくマッサージするように行います。
口唇を少し厚めに掴む → 口唇と歯肉の間に指を入れて外側にふくらませる → 口唇がめくれないように気をつけながら縮める → 口唇を歯に向かって押し付け、そのままゆっくりと押し下げる → オトガイ部を軽く叩く
歯並びや摂食嚥下に影響する口腔習癖
舌を出す癖や指しゃぶりなどの習癖は歯並びや摂食嚥下機能に影響を及ぼす可能性があります。
指しゃぶり
3歳半以降でなるべくやめるよう指導しましょう、習癖が残ると開校という前歯が離開する歯並びになる場合があります
異常嚥下癖
舌を前に押し出した状態で飲み込む癖です。
弄舌癖
虫歯の穴などをきにして舌をうごかしたり、舌で遊んでしまう癖です。
咬唇癖
前方に突出した前歯に下口唇がかみこむ癖
口呼吸
鼻呼吸が望ましいですが、アレルギーで鼻が詰まったりすると口呼吸になりやすいです。
口唇閉鎖不全
ポカン口といって口がしっかりと閉鎖しない状態になることがあります。
舌突出や口唇閉鎖不全などの習癖が見られた場合は専門家の摂食訓練を受ける方が良いケースもあり、小児でもVF(嚥下造影検査)であれば誤嚥の有無や対応策の立案なども可能ですので一度専門機関に相談するのも良いでしょう。
*参考文献
小児の摂食嚥下障害 日本摂食嚥下リハビリテーション学会編集
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